2001年11月開催のEMC World Cup Golfのスポンサーとして、準備に3年間かかりました。高速道路の出入り口、近隣の道路事情、宿泊施設、東京・横浜からのアクセス、企業イベントを開催するための大きなコンベンションセンターの確保。ゴルフ場の一部改修。PGAのトーナメントともなるとこんなにも手間をかけて準備をするんだと勉強になりました。会場は静岡・御殿場にある太平洋御殿場コースに決定しました。
PGAの企画するお客様イベントは工夫が満載で本当に勉強になりました。重要なお客様をただ集めて素晴らしいゴルフ場でラウンドして頂くだけでも十分凄いですが、それだけではない面白さ・魅力をゴルフは持っていることを教えてもらいました。最初はスキルズチャレンジが何を意味するかも知りませんでした。もっと言うとこの頃まだ私はまだゴルファーではありませんでした。少し体験したことがあるだけで、自分の基本はテニスでした。ゴルフは60歳くらいになったら始めようくらいに考えていました。当時40歳でしたから20年後計画でした。その全てがタイガーウッズとの出会いにより一変しました。
イベントの開催そのものは悲劇に襲われました。NYの11/9の大事件が大会の2ヶ月前に勃発しました。当然世界中のトッププレーヤーが飛行機に乗ることを拒否しました。一瞬イベントの開催そのものが危ぶまれましたが、一人のリーダーの発言で情勢が変わりました。そうです、当時世界ナンバーワンのタイガーの俺は行くという鶴の一声に救われました。こうして無事に全員参加でWorld Cupが、国の威信をかけた戦いが開催されたのです。
大会最終日。15番ホール終了時でアメリカチームはホールアウトした南アフリカチームに4打差のリードを許していました。絶体絶命です。あと3ホールしかないのに4打の差は。素人の私にはそう見えました。しかし主催者テントの中のPGA関係者のアメリカ人達は行ける!行ける!タイガーならやってくれる!と興奮していました。不調のデイビッド・デュバールに足を引っ張られながも16番・17番と奇跡のようなバーディで18番ホールPAR5を迎えました。タイガーウッズのティーショットは完璧。フェアウェイ下の段まで届く火を吹くようなショット。2打目はデイビッドの番。プロであればアイアンで2オンできる最高のチャンスです。しかし彼の2打目は最悪の右の池の方向に!万事休すかに見えましたが、辛うじて池を越えグリーン右横のラフに届きました。
最終日のピンの位置は厳しくエッジから数ヤードと最も難しい設定。しかもボールは左足下がりの最悪の位置に。これをグリーン上の段にのせなければなりわません。しかも、ピンはすぐそばに。誰もがアメリカチームの優勝をあきらめましたが、一人だけは例外でした。ピンのそばの土手に静かに立って風や地面の固さを感じている様子でした。タイガーは静かな闘志でオーラに包み込まれているように見えました。私はスポンサーテントのベストポジションから見下ろしていました。
その瞬間、大袈裟ではなくゴルフ場のグリーン周りの地面が大歓声で地震のように揺れ動きました。信じられません!奇跡のイーグルショットが目の前でホールに吸い込まれていくではありませんか!可能性ゼロとしか言いようのない程の困難な状況からのミラクルに歓喜の声が爆発しました。体の震えが止まりませんでした。大会後も御殿場太平洋にお邪魔する度に思い出して涙が出ました。それほどの困難な状況で飛び出したミラクルなんです。
大会後に多くのプロゴルファーが同じ状況からトライしたそうですが、100発打っても入らない事がほとんどだったそうです。今でも18番ホールのグリーン横のラフには記念のプレートが埋まっています。本当に感激の瞬間でした。今でもタイガーウッズは私の心の中のとても大きなヒーローです。
大会直前にスポンサーとしていろいろなイベントを開催しましたが、その中でも一番の思い出は御殿場太平洋ウェストで開催した重要顧客イベントでした。アジアの大切なお客様50名だけをご招待する企画で、前半30分がタイガーの実演ショーで後半30分がタイガーのトークショーでした。当時のタイガーは絶好調で練習ラウンド後シャワーを浴びて会場に現れた時は大きなオーラに包まれていました。前半の実演では「私は試合中はよく曲げてしまいますが、練習では300ヤードもまっすぐ打てるんですよ」と笑いながら実演してくれました。ラフからラフにフェードもドローも自由自在に打ち分けてくれました。これぞ世界一のショットの連続でした。3名だけを選んで、クリニックも実施してくれました。皆さん感動で震えていました。
会場を室内に移動してのトークショーでも私は大いに感激しました。彼の話し方、目の配り方、間の取り方のどれを取っても超一流のビジネスパーソンのそれと全く遜色ない高いレベルでした。さすがスタンフォード大学卒業だと感激しました。交渉当初彼のエイジェントはサインは3つしかできないと通知してきました。90分のイベントで2億円も支払っているのに。必死の交渉でなんとか30個のグッズに彼のサインを獲得しました。トークショーの最後に賞品プレゼントタイムを準備しました。賞品を手にしたお客様の嬉しそうな顔が今でも忘れられません。
タイガーの実演とトークショーの合間に私にとって奇跡の「役得」の時間が訪れました。なんと!タイガーと1対1で話すチャンスをありました。私はゴルフの技術はもちろんですが、彼の歩き方がとてもカッコいいとファンでした。彼はゴルフのほとんどの時間は歩いてる。歩き方には本当に気をつけているといろいろ話してくれました。サインもしてもらい、握手もしてもらうという信じられないような幸運に興奮していました。その握手してもらった自分の手を見つめていると本気でゴルフを極めたくなりました。その日を境に気が狂ったようにゴルフの練習を始めたのでした。
今でも御殿場に行くとタイガーのミラクルショットの事を思い出し、胸が熱くなります。タイガーの復活を心から夢見ているファンより