これからのグローバル時代を生き抜くには、世界標準の武器である英語を身につけているのは当たり前だと思ってください。
日本で生まれ、日本で育ったので英語はできませんというのは、もう言い訳にならない時代に突入しています。好きとか嫌いとか、良いとか悪いとかいう問題ではなく、英語が国際的な標準言語として君臨する現代社会を受け入れて、その舞台で戦う心構えが必要です。
英語の重要性は強く言われていることですが、これからの世界で戦う人にとっては、あらゆるビジネススキルの大前提となるものですので、英語に自信がない人は、今すぐ優先順位の第一位に英語の習得を位置づけるようにしてください。
もっとも、私はTOEICで900点を取れる自信がありますが、こんな私の英語も世界ではなかなか通じない。日本の英語教育自体がそもそも間違っているわけですが、ここでそういう話をしてもしょうがない。英語の習得法については他の本を読んでもらうとして、ここでは、世界で戦う上でもっとも重要な「英語的な発想」について紹介しようと思います。
それなりに英語が話せる人でも、この発想を持っていないと、外国人とスムーズにやり取りしていく上で必ず障害が生まれます。
日本語は非常に美しい言語ですが、日本という風土において効果を発揮する婉曲表現などが多く、世界のビジネスシーンでは時に誤解を生じてしまいます。単に日本語を英語に変換して使うだけでは、多くの場合、齟齬が生まれてしまうのです。
そもそも日本語でも何を言っているのかわからない会話を、そのまま英語に翻訳すれば、ますますわからなくなるのは当たり前でしょう。
そうならないために、表現の手法を英語の文法に当てはめて考える習慣を持つようにしましょう。
英語的な発想をするには、まず英語の構文「SVO」(主語+述語「動詞」+目的語)を意識する訓練が必要です。メッセージの結論を導くのは述語である「動詞」です。
日本語は名詞中心の言語ですが、英語は「動詞」を用いて、どんなアクションをするのか、何を相手に期待するのか表現します。
動詞を意識すれば、必然的に何をするのか、何がしたいのか、何をしてほしいのかを明確にしながら話さざるを得なくなります。
また、日本語では「主語」を省略して話すことが一般的ですが、英語では主語が必ず必要です。主語を「I」で話すことを意識すれば、一般論としてとか、会社の方針でとか、世間では、という言い回しがいかに曖昧なことを言っているのかがわかってきます。
例えば、こういう構文がよく会話に登場してきます。
「I disagree. Because~」
英語ではまずは「賛成しない」という結論を最初に言い、それから理由を述べるのが一般的ですが、日本語では逆にBecauseから話し始め、「~ですよね?」と周りにまずは賛同を求めたりすることが多いです。
ところが、主語と動詞を意識することで、自分はどうしたいのか、自分の意思とは何かというのを曖昧のまま語れなくなってきます。
日本語は比較的、この二つを曖昧にすることで、周囲との調和をはかることに役立ちますが、この曖昧さはビジネスにおいては、「意思がない人」「何をやりたいのかわからない人」と、逆効果になります。
自分の確固とした意見・考えを持って話せるようになるためにも、自分の言動に責任を持つためにも、主語と述語(動詞)」を軸にした発想に切り替えるようにしてみてください。
リーダーの根本的な素質に、決断すること、自分の言動に責任を持つこと、部下や他人にわかりやすく話すことが挙げられます。
それを親のせい、会社のせい、経済状況のせい、社会のせい、他人のせいにしていては、いつになっても自分の価値基準は生まれません。
リーダーとしての責任範囲が広がれば広がるほど、それに比例して自分が下す一つ一つの決断が周りに大きな影響を及ぼすようになります。一つ一つの決断の重みを受け止めて、自分が責任を持って決断を下すことが要求されます。
会社の方針だからとか、社長や上司が言ったからと他人任せの逃げ腰の態度では、部下に自分の決断を納得させたり、決断した方向に一緒に行動させることができなくなります。
リーダーがコミュニケーションで気をつけなければいけないのは、自らの発言から曖昧さを排除することです。余計な推測を必要とするような中途半端な逃げの話し方はやめましょう。無駄な時間を消費するだけです。始めからストレートに自分の意見を伝えるようにすることです。そのためには、誰もが等しく判断できる話し方を心がけることも大切です。
私はIBMに始まり、オラクル、EMC、そしてアップルと約三〇年にわたって外資系企業で過ごしてきましたが、私が部下と話している日本語を聞いていて、外国人から「だいたい何を話しているのか推測がつく」とよく言われていました。
日本語をまったくわからない外国人が、なぜ私の日本語のメッセージがわかるのかといえば、私の日本語の話し方も限りなく英語の文法に近いからです。
例えば、ほとんどの話題で、私は主語を「I」で話しています。また、可能な限り動詞を使って、結論を先に持ってくるようなまとめ方をしたり、句読点を頻繁に入れ、ダラダラとした長い文章にしないことを意識して話していました。
「私は○○に決めました。では、よろしく!」
あまりにも簡潔過ぎるし、もの凄く早くしゃべるので、アップル時代では逆に日本人の部下が「山元さんが何を言っているのわからない」と尋ねてくることが多かった。そういう私の日本語を、わかりやすい日本語に翻訳してくれる通訳がいたほど(笑)。「山元さんは外資系のニオイがする」とよく言われた所以かもしれません。
いずれにしても、これは日本語の表現を否定しているわけではなく、ビジネス上は英語の文法こそが明確さを助長するという意味です。