ビジネスでは、数えきれないほど多くの会話や意思伝達が毎日発生します。一人でできることは限られており、人と協力しながら、お互いをサポートしながらビジネスは進められていくのです。信頼を築くにも、絆を深めるにも、チームワークを強化するにも、コミュニケーションは人と人をつなぐあらゆる場面で必要になってきます。
コミュニケーションの重要性についてはさんざん言われていますが、これは決してテクニックでは片づけられません。コミュニケーションについての本はたくさん出ていますが、本を読んでコミュニケーションがうまくなったという話は聞いたことがありません。
これまでの教育から、日本人は授業中には静かに先生の話を聞くことがよしとされ、クラスなど複数の人の前で間違ったことを言うのは恥ずかしいことだと知らず知らずのうちに教えられてきました。こうした刷り込みもあって、自分の意見を他人に聞かれることに強い抵抗感があり、こっそりとメールで済ませたいという気持ちの人が多いように思えます。
私が講演をする際によくあることですが、最後の質疑応答の時間には質問をしなかった人が、講演が終わった瞬間に一目散に私のところに駆け寄り質問をしてきたり、後からメールで連絡がきたりということがあります。
もちろん聴衆全体が聞いている中であまりにも個人的な質疑をするのは周りへの配慮に欠けていますが、話を聞く限りそういうことはほとんどありません。単に恥ずかしいという思いが強いようです。
実はビジネスの国際会議の場でも状況は同じで、多くの日本人は意見を言いません。しかも寝ている人も少なくない。世界中から集まるので誰でも時差ボケで眠いわけで、意見を言う気がないから余計に眠くなってしまう。
こういう様子を見ている世界の人に、「日本人の90%くらいは英語での会議に出席するレベルではない」となめられています。そうなめられていることすら、当の日本人は気がついていないのが実情です。
コミュニケーションは、相手と向かい合おうという強い心が大切です。コミュニケーションとは「覚悟」なのです。覚悟がない限り、どれだけテクニックを駆使しても、相手とわかり合えることはありませんし、意思疎通はできません。
これからの世界で働くみなさんは、日本人だけでなくさまざまな国籍、人種の人たちと一緒に働くことになるはずです。望むとも望まぬとも、そういう中でコミュニケーションをとっていくことが必要になります。
バックグラウンドも違う海外の人たちと真にわかり合うには、何より自分の考えを相手に伝え理解してもらおうという本気度が求められます。英語がどれだけ堪能でも、この覚悟がなければ通じ合えません。
ビジネスは人対人ですから、これは当たり前のことです。コミュニケーションが苦手な人ほどついテクニックで何とかしようと思いがちですが、どれだけテクニックを学んでも、人対人が向き合うコミュニケーションでは、日本人同士だろうと相手が外国人だろうと役に立ちません。
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